お遍路の心得


「十善戒」 

一、不殺生(ふせっしょう) 殺生することなかれ
二、不偸盗(ふちゅうとう) 盗むことなかれ
三、不邪淫(ふじゃいん) 邪淫することなかれ
四、不妄語(ふもうご) 偽りを言うことなかれ
五、不綺語(ふきご) 虚飾の言葉を言うことなかれ
六、不悪口(ふあくく) 悪口を言うことなかれ
七、不両舌(ふりょうぜつ) 二枚舌を使うことなかれ
八、不慳貪(ふけんどん) 貪ることなかれ
九、不瞋恚(ふしんに) 怒ることなかれ
十、不邪見(ふじゃけん) よこしまな考えを起こすことなかれ

巡拝の心構え

「三信条」

 一、摂取不捨の御誓願を信じ、同行二人の信仰に励みましょう。

「摂取不捨の御誓願」とは、お大師様が御入定される2年7ヶ月前の高野山万燈会の願文
「虚空尽き、衆生尽き、涅槃尽きなば、我が願いも尽きなん」
(この世がなくなり、悩みや苦しみを持つ人が一人もいなくなるまで、救い尽くすであろう)
そう述べたお大師様が、我々巡拝者の傍らに寄り添って、ともにその行いを見守ってくれている。常に弘法大師と「同行二人」という信念をもって巡拝し大師の救済を信じる事が肝心ですという意味です。

二、何事も修行と心得て、愚痴・妄言を慎みましょう。

お遍路は旅そのものが修行です。身に起こることは、自分の修行と心得て、心やすらかに過ごさなければいけません。
人間には、限りなくほしがる「貪(むさぼ)り」、他人を傷つけ、自らも損なう「瞋(いか)り」、物事の道理をわきまえない「癡(おろか)さ」がつきまとうといわれています。
仏教では、これを「三毒(さんどく)」とよんでいます。
これらは、目標の達成の障害こそなれ、決して益にはならない、という信条です。
「千年の功徳もわずかの怒りに消える」とお経に説かれています。
遍路は楽しいことばかりではありません。何事も試練、修行と受け止めましょう。

三、現世利益の霊験を信じ、八十八使の煩悩の波を静めましょう。

「現世利益」とは、仏様によってこの世で救済されること
決して、お金が儲かることではありません。
「煩悩」とは、制御調整をはずれた欲望のこと。
「倶舎論」という書に、「八十八の見惑」とよばれる誤ったものの見方や考え方が列挙されており、
いかなる人も、この世で救われることを信じ、八十八の煩悩を転じて、悟りの世界にはいるよう功徳を積みましょう。
四国の霊場の数の根拠とされています。
しかし本来「欲望」は、排斥されるべきものではなく、よりよく発揮されるように仕向けることが正しいあり方です。
札所を巡ることで、八十八の煩悩をおさえ、悟りを目指しましょう!